こどものおいしゃさん日記

何だってこんなことになってしまったのだろう

送り出す

来月のシフトを組みながらまた頭を抱える。回らん。

2年間にわたってがんばってくれた若手を、来月は送り出すことになるわけだが、送り出してしまうとなお回らない。

しかし彼の成長のためには送り出した方が良いというのも事実だ。2年間うちにいて、新生児によくある病気はひととおり診たはずなので、今はひたすら経験の量を重ねて質に転化させるべき段階に来ている。ということで、いよいよ大きなNICUサイトへ向けて送り出すことになった。そこで今以上に幅広くたくさんの症例*1を診てゆくうち、ふと気づくと現時点よりも一段も二段も上のレベルから全く違った世界が見えているということになるはずだ。

うちの施設にとっては、あるいは端的に申して私にとっては、出て行かれるのは痛いことだ。でも、痛いと言ってうちの都合で長居をさせようとしても良い結果にはならないだろう。気持ちよく出て行くか、喧嘩別れして出て行くか、無理やり引き留めていやいや仕事を続けさせるかの三択になりそうに思う。それなら気持ちよく送り出す方が良い。

内田樹先生のご高説にもあるとおり、どうしても欲しいものがある場合に、それを手に入れる唯一の方法は、まず自分からそれを他に贈与することだ。私は内田先生ほどに学識も人生経験も積んでいないが、たぶんこれは本当のことだよなと思う*2。優秀な若手ほど欲しいものは無いとしたら*3、それを手に入れる唯一の方法は、たぶん、うちの優秀な若手を良い時期に他施設へ送り出すことなんだろうと思う。

逆に、実も蓋もないことを言えば、あの施設へ行ったら延々放してもらえず飼い殺しにされるとかいう評判なんぞ立ってしまったらもう救いようがない。

*1:赤ちゃんを「症例」と呼ぶことに不快を感じられる読者諸賢もおありかと思い普段は控えています。すみません。

*2:そうささやくのよ、私のゴーストが。

*3:もちろん優秀なベテランならさらに大歓迎だけれども奇跡とか天変地異とかは語っても仕方ない。